安房直子さんの世界を語り継ぐ 花豆の会

花豆通信 第7号 2005年8月14日発行
 
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           目  次

  □花豆ライブラリーF
  ◆単行本未収録作品「袂(たもと)」
 □その他 
  ◆私の憧れ 安房直子さん  上松 恵美子
  ◆読みきかせメモ
  ◆白樺のテーブルトーク「安房直子朗読館その2」 近江 竹生
  ◆お知らせ
  ◆2004年度 会計報告
  ◆花豆文庫
  ◆花豆の会の活動
  ◆安房さんの人形自慢・・・
  ◆〜花豆・粒粒〜


花豆ライブラリーF
 袂(たもと)

安房 直子   .

 私は、思わず足を止めて、それを、ひろい上げました。月の光にかざして、よくよくながめると、なんとそれは、袂でした。
袂は、上等のちりめんで出来ていました。しっとりと、やわらかで、いい匂いがしました。そして、たった今、誰かの着物から、ちぎれて落ちたように、あたたかいのでした。 私は、夢をみているような気がしました。
風もないのに、遠くで口笛が聞こえます。誰かが、ざわざわと、笑っています。
私は、かけだしました。
(待って、待ってちょうだい。あなた、袖を落としましたよ)
私は、うす桃色のふりそでの娘さんを、追いかけていました。私が通るほんの少し前にこの道を通ったにちがいない人を、夢中で追いかけていました。
(待ってちょうだい。ほら、袖が落ちましたよ……)
私が走ると、月も走りました。月は、青い光を、林いっぱいにまき散らしながら、声をたてずに笑っているようでした。

(本文より一部抜粋)

 

(「新しい女性」14巻4号 吉川書房1980年 掲載)

深い藍色の夜空と、こうこうと輝く月の光に、あざやかな着物の袂・・・何とも言えない安房直子独特の美しい世界が光る小編です。単行本未収録作品


私の憧れ 安房直子さん  上松 恵美子

長年小学校教諭をされていた上松さん。自作の「みどりのスキップ」のランプシェードを飾って、子ども達に安房作品の紙芝居や読みきかせをなさった素敵な体験を、子ども達の感想と共に書いていただきました。

まず始めにこの原稿を依頼されて、私の心は、戸惑いとオドロキの気持ちでいっぱいになり仕上がるか不安でした。
安房さんは、私にとって憧れの人です。作品は私の心の潤いのもと。ある時は癒し、ある時は励まし、又ある時はスリルのある冒険心を呼びさましてくれます。どちらかと言えば、私は一人でゆっくりじっくり、作品に浸っていれば、それで満足なタイプの人間です。
でも、ある時、友人の紹介で「花豆の会」がある事を知り、花豆通信を送っていただく事になりました。通信を読みながら安房さんの事を知ったり、又、他の方がどんなふうに安房さんの作品と接しているのかを知り、とても参考になりました。
さて、私には他にも大切に思っている事があります。それは陶芸です。土をさわっていると、なぜか手の平から土のエネルギーが伝わってきて、心が安らぎ、落ちついた気持ちになれるのです。
この大切な事二つ。ある時、ピカッとひらめきました。陶芸で安房さんの作品のランプシェードを作ったらいいのではないかと・・・・。その時は、なんて素敵な思いつき!と、わくわくしました。でも思いつきが、

そんなにすぐに実行に移せるわけはありません。

◎ 花豆文庫に出席して

年一回の大きな会「花豆の会」に参加したいと思いつつも、陶芸の会や仕事の行事と重なり、毎回悔しい思いをしていました。
でも、「そうだ、花豆の会に出られなくても花豆文庫に参加してみよう。」と思い、迷いながら遊葉館を訪ねたのは、一昨年の夏でした。初めての参加でしたが、皆さんとすぐにお話ができ、とても、うれしく思いました。安房さんの御主人ともお会いできました。遠方から来ている方もいて、安房さんの作品は、皆さん当然のように、全部読破していて、素晴らしく感じられ、やはり私は、皆さんには及ばないという感じがしました。それでも、二回目は、だんだんと自分でも慣れて来て、ランプシェードの話や、できたら読み聞かせもやってみたいという話もしました。
できるという確信は、あまりなかったのですが、人前で言えば、する方向に努力していけると思いました。
そして去年の夏。「みどりのスキップ」のランプシェード作りに取り組みました。
なかなか思い通りには出来ずに、失敗だと思っていましたが、あかりを灯したら、なんだか、これでもいいかと思えるようになりました。又、花豆の会から、「緑のスキップ」の紙芝居も借りる事ができ、なんと、トントン拍子に、私の夢が、実現の方へ動き出したのです。

◎ なぜ「緑のスキップ」か

私が初めて安房さんの作品に出会ったのは、教科書にのっていた「きつねのまど」でした。ききょうの汁で指を染め、青いまどから、なつかしい世界が見える話、こんな不思議で、なぜか、なつかしく感じる話に今まで、出会った事がありません。私は子ども達に教えながら、自分自身が、どっぷりとはまってしまいました。次に文庫本で安房さんの本をさがし、わくわくしながら読み続けました。その時に「緑のスキップ」を読んであげたのを覚えています。十五年位前の事でした。
そして、私が参加したくてできなかった、第四回「花豆の会」。私の友人が、紙芝居作りに参加しました。
そんなわけで、やっぱり、私の夢の実現の最初は、「緑のスキップ」なのです。

◎ 緑のスキップ

子ども達の感想より〜三年生

・河野 留奈
 緑のスキップを読んでもらって、きせつってぜったいかえられないんだなあと思いました。みみずくにとって、すこしかなしいおわりだったけど、また春になったら、きっと花かげちゃんもまたくるよってみみずくにいってあげたかったです。わたしには緑のスキップがきこえるかな?さくらの下で花かげちゃんが見えるかな?きこえるといいな、緑のスキップ。見えるといいな、花かげちゃん。

・熊倉 綾華
 緑のスキップは、すっごくいいお話でした。とくに、みみずくがさくらをちらせない所が一ばんすきだったです。絵がとてもきれいで絵がかわるたんびにどきどきしました。はじまりのときにならしたみみずくの形のすずがきれいでした。あと、とちゅうでつけたランプもすっごくきれいでした。


 

白樺のテーブルトーク
安房直子朗読館その2  近江 竹生

はじめまして。安房さんファンとしてはまだまだ新米なのですが、この六月に「安房直子朗読館その2」という朗読会を開いたので、その時の感想をお話しようと思います。
今回は演出を友人の鈴木火夫に、賛助出演として声優の泉久実子にお願いして「きつねの窓」近江「奥さまの耳飾り」泉「だれも知らない時間」を泉・近江の二人で、計三本を日暮里のライブハウスで朗読しました。
昼夜公演で約130名のお客様にいらして頂きましたが、なんと半数の方がアンケートを書いて下さったのです。(実はこれは私の通常の朗読会としてはかなり高い回収率なんですヨ。)その約60枚のアンケート中、安房さんを知っていたのは10人に満たない数でしたが、「不思議な世界に迷いこんだ感じで面白かった」「1時間あったら何ができるか考えました」「他の話も読んでみたい」等々、作品に対する様々な感想が書いてありました。
すでに安房さんのファンにはそれぞれの大事にしているイメージもあると思いますので、朗読も受け入れにくい所があるかもしれませんが、その点初めての方はとても素直にお話に入ってきてくださるようです。
スキだから読んでいるのはもちろんですが、新しい読者層を広げる意味で朗読も少しは役に立てるかな(?)と嬉しく思いました。

 


 
安房さんの人形自慢・・・

先日ほめられたので気をよくして、又、人形のはがきをつくりました。
これは、いちばんはじめに買った子で、着物の柄から松子といいます。
帯も着物も、とてもいいものを着ていますので、どんな着替を作っても見劣りがしそう。
でも、秋からはじまる “人形の着物教室”というのに入って、ちゃんと縫えるようになりたいとおもっています。
そのうち、人形の話を書いて、この「道楽」が意味あるものになりますようにと思っています。
人形自慢のはがき、お返事は、よろしいのです。
  安房 直子  

安房直子さんの大好きだった人形たち  

安房さんは、人形の写真を撮って、私製ハガキにしていました。
1面に掲載した作品「袂」のモデルになった人形も、この中にいるかもしれませんね。左は、安房さんが撮った「松子」(上の写真の左から2つ目)の 写真ハガキに書かれていたお便りです。




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