安房さんの新たな側面や人となりが
第五回「花豆の会」 坂口正彦 |
台風の接近で大雨の2003年5月31目、第5回花豆の会が開催されました。35名の方の参加をいただき、今年から会場となった日本女子大の桜楓会館の、ゆったりとした雰囲気の中、南史子さんの司会のもと、生沢あゆむさんの開会の言葉で会は始まりました。
初めは、秋元紀子さんによる「銀のくじゃく」の朗読でした。40分をこえる熱の入った朗読に参加者全員が熱心に耳を傾けていました。
休憩の後は、海賊同人によるパネルトーク「安房さんと海賊」でした。
森敦子さんは「海賊までの安房さん」という題で、高校・大学時代のエピソードを交えて、安房さんの知識欲旺盛で何事も一生懸命に必ずやりとげる姿をお話されました。
北村斉子さんは「初期の作品に与えた影響」という題で海賊創刊前後の経緯を、山室静氏との出会いやその後の交流等を中心に詳しく話されました。
南史子さんは「さんしょっ子以後」という題で海賊と安房さんのその後の活動の様子を紹介され、両者の関わりについて細かくお話されました。
生沢あゆむさんは「安房さんのつぶやき」という題で海賊のあとがき「マスト」と、合評会だよりの「ニュースレター」から、安房さんに関する記載を紹介されました。特にニュースレターは本邦初公開ということで、合評会での生々しいやりとりが伝わってくるようでした。
蓮見けいさんは「癒しのちから」という題で、安房さんの作品世界についての考察を理路整然とお話くださいました。
そして、「もうひとこと、安房さん像に迫る」という題で、田谷多枝子さん、田中まる子さん、鈴木千歳さんから、それぞれ安房さんについてのエピソードなどをお話しいただき、パネルトークは終了しました。
これまでにない、多くの近しい人によるお話の数々は、安房さんについての新たな側面や人となりを知ることができ、大変有意義な内容でした。
懇談では、多くの参加者から会の感想や安房さんや作品との思い出が語られました。感激で涙ぐむ人や、安房さんに関する本の刊行の話が出るなど、多くの声が寄せられました。
最後に安房さんの夫君である峰岸明氏の挨拶で会は締めくくられました。3時間をこえる時間があっというまに過ぎ去る濃密な会でした。
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日本比較文学会東京大会 シンポジウム
「日本的幻想をめぐって」
〜鏡花、賢治、安房直子〜
生沢あゆむ |
二〇〇二年十月、日本比較文学会東京大会において「日本的幻想」をめぐってというテーマで、シンポジウムが開かれ、鏡花、賢治と並んで安房さんの作品が取り上げられました。その模様をお伝えします。
最初に司会の私市保彦氏(武蔵大学)より、「いずれの作家も、西欧からもたらされた《近代》を背負いながら、あるいは前近代の日本の伝統世界、あるいは日本のフォークロア的世界、あるいは自然と人間が一体となった原世界を近代に対峙し、独自の日本的幻想を創造した作家です。三者はいずれも、『遠野物語』の影響を受けていると考えられます。安房直子は、読まれていない方も多いと思いますが、賢治以来の最もすぐれたファンタジー作家です」と紹介がありました。
次に、倉智恒夫氏(川村学園女子天学)が、泉鏡花について話され、続いて千葉一幹氏(東北芸術工科大学)が、宮沢賢治について話されました。
安房直子については、小宮彰氏(東京女子大学)が担当され、年譜(現代児童文学作家対談9』所収の自筆年譜と作品の抜粋(「きつねの窓」「熊の火』「火影の夢」「ふろふき大根の夕べ』)が配られ、《異界》のあり方の分類として、《異界》との接触のあり方、《異界》のあり方の要素などに作品を分析し、大変ていねいなお話がありました。
つまり、主人公が異界・自然界に運ばれ、そこで異界の存在と接触をもち、自然と人間の一体感をいかに表現したかなどを、日本的幻想として、こまやかに話されました。
その後の質疑応答で、
「鏡花は、異界に入り込んでいない(半近代的である)が、賢治、直子は異界に入り込んでいる、異界のものと話をするのも普通(ポストモダン)、自然と融合している」
「人間も動物も植物も、この地上に生を受けて実在しているものすべて、そして、過去のものも、未来のものも、時空を越えて自由自在に飛びまわることができる、ということを意識した」など語られる中で、これからも安房さんの作品が、多くの人をひきつけて離さないであろうことを、確信いたしました。
参照「日本比較文学会東京文部ニューズレター54号」
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白樺のテーブルトーク
「安房直子の夏休み」 |
この夏、皆様はどのようにお過ごしでしたか。安房さんは一九七二年頃より、夏は軽井沢の別荘で過ごされたようです。木漏れ目の中で小鳥の声に耳をすませ、愛らしい野の花に笑みをこぼされたことでしょう。
「森を歩くのがすきです。木を見るのがすきです。いつか、森のメルヘンを書いてみたいと思っていました。」
こんな言葉が『白樺のテーブル』(偕成社)のカバーに記してあります。夏の軽井沢から沢山の物語が生まれたにちがいありません。
一九九〇年夏に軽井沢から頂いた葉書にこんな風に書いてあります。
「私は、こちらで、ノート一冊分書こうと思って午前中は、毎日すわっています。今のところ好調です。来週は、バスに乗って町へ行って、おいしいパンやケーキ、ジャムを買ってこようと思っているところです。私は、軽井沢のブルーベリー・ジャムが大好きなので、ひとびんお送りしたいと思っています。・・・」
安房さんは、バスでおつかい。なぜなら、自転車に乗れません。いつでしたか、「私もよ・・・」と告白しますと、安房さんは喜んで「アハハハ」と大笑いなさいましたっけ・・・。(南 史子)
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たくさんのお便りを有難うございました。嬉しく読ませて頂いております。前号掲載の、未発表安房作品「レースの海」についての感想を、多く頂きました。お便りの中から一部をご紹介します。
▼「レースの海」一字一字、惜しむようにゆっくり読みました。少女の編むレースの海がとめどなく広がってゆき、いったいどうなるのだろうと、そらおそろしくなったとき、物語はなんとも鮮やかに終わり、ほおっと深いため息が出ました。久しぶりに美しい安房先生の物語に浸れて、幸せなひとときでした。(T.Y.さん)
▼安房直子さんは亡くなられていますのに、こうして"新しい"安房直子さんと出会えて、言いようもなくうれしく思います。(N.K.さん)
▼安房作品は、誰かがふと一篇をひもといたとき、そのまま次々に扉をひらいて歩きつくしてみたくなる館のような構造が、全体にわたってある、と思います。(作家 藤沢成光さん)
(藤澤さんは『安房直子 − こころが織りなすファンタジー』を2004年1月に、てらいんく社から出版予定とのこと。未刊行作品を含めた安房作品のほとんど、全270篇に言及されるそうです。楽しみですね。) |