安房直子さんの世界を語り継ぐ 花豆の会

花豆通信 第1号 1999年5月30日発行
 
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           目  次

 □花豆ライブラリー@
  ◆エッセイ『森の中の朝食―「ねずみの作った朝ごはん」によせて』

 □第一回「花豆の会の集い」について
  ◆
「安房直子さんの人と作品を語る会」ご報告(南史子)

 □その他
  ◆
花豆の会誕生!
  ◆
奇縁の輪
  ◆ハガキメッセージ
  ◆
会ができるまで
  ◆会計報告
  ◆あとがき


 花豆ライブラリー@ エッセイ 
 森の中の朝食 
   〜「ねずみの作った朝ごはん」によせて

安房 直子


 朝、さわやかに目ざめるというのは、本当に、すてきな事です。そして、そのあとで、ゆっくりと食べる朝食は、きっと、その人の一日のすばらしいエネルギーになってくれるのではないでしょうか。

 (本文より)


 作品について  小平 範男
「ねずみの作った朝ごはん」は、光村図書出版の『国語三下 あおぞら』に収録されています(事務局注:現在は掲載されていません)。秋書房から刊行された同名の絵本では、絵を田中槙子さんが受け持たれましたが、こちらは南塚直子さんです。本稿は、教師用の学習指導書に寄せられた「作者の言葉」です。


「安房直子さんの人と作品を語る会」ご報告 南史子(司会)
 去る三月二〇日(土)、「安房直子さんの人と作品を語る会」が、遊葉館において持たれました。あいにくの雨にもかかわらず、二四名の方々がご出席下さり、主に、今後の会の持ちかたについて、話がはずみました。今回は、画家や編集者、「日本児童文学」と「海賊」の安房さんの追悼号に寄稿された方々に、ご案内状を送らせていただきました。

 会場の正面に飾られた安房さんの写真を囲んで、コの字型に着席して、安房さんがお好きだった紅茶をいただきながら、会がはじまりました。
 はじめに、会ができるまでのいきさつを、蓮見啓さんが話しました。続いて、世話人代表の小平範男さんの挨拶が予定されていましたが、急な発熱のため欠席となり、ファックスレターを代読というかたちの挨拶になりました。
 次に、世話人からの「提案」が話されました。
 毎年命日のあたりに、安房さんの人と作品を語り継ぐ会を持ちたい等の提案で、皆さんからご意見を、というものでした。
 その後、出席の皆様全員に、自己紹介と安房さんとの関係などを、お話しいただきました。お一人一分程度しか、時間がなかったのが残念でした。
 後半は、小西正保さんにワインで献杯して頂いてから、懇談にはいりました。「提案」に対しての、こ意見がたくさん出され、今後の会のイメージ作りが、懇談の中心になりました。安房さんの夫君である峰岸明さんからは、、ご本人は地道で小さなものをむしろ喜ぶ者であったから、どうぞ無理のない会作りを、とのお話がありました。最終的には、皆さんから出されたご意見を参考にして、世話人が考えを、まとめさせていただくということで、話はまとまりました。安房さんの思い出や作品についてなど、もっと語りあう時間が持てなかったことを、ご参集のみなさまに申し訳なく思っています。
 最後に、安房さんの作品「きつねの窓」の一部を、生沢あゆむさんが朗読しました。安房さんの世界がそくそくと伝わってきて、切ないような心地を味わいました。その後全員で記念写真を撮りました。
 小沢良吉さんからの白いスイートピーの花々、「海賊」のみなさんからの百合やカーネーシヨンの花々、それに安房さんを愛する皆様に囲まれて、写真の中の安房さんはうれしそうでした。

 
花豆の会誕生!
  「安房さんの作品を、つぎの世代に語り継ごう」
  「原画とマッチした安房さんの単行本を残そう」

 このみんなの思いが、安房さんの七回忌を迎えたいま、会の誕生を実現させました。
 「安房直子さんの世界を語り継ぐー花豆の会」がそれです。毎年一回早春の頃(二月二五日の安房さんの命目近く)に、「花豆の会」を持つこと。その後、会の報告を中心にした「花豆通信」を発行すること。当面はこの二つを、会の活動の中心にしていきたいと思います。
 「花豆の会」では、安房さんと画家による二人展をはじめ、子どもと一緒の朗読会や、作品を語りあう会をしたいなどの意見がでています。「花豆通信」には、会の報告だけではなく、安房さんを敬愛する多くの方にお伝えしたいこと、たとえば、出版事情や読書感想、エピソードなども掲載したいと思います。
 また、遊葉ワークルームを利用して、月一回程度(?)、安房さんの作品を自由に読める場を設けてはどうか、という案もあります。当面の経費はカンパをお願いして(あとがきに詳細)、運営は、世話人小平範男、生沢あゆむ、蓮見啓、南史子の四名が、させて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。皆様のご意見をお待ちしております。

    世話人一同

奇縁の輪  小平範男
おととしの秋、私どものりんご園より宇佐見英治先生の『明るさの神秘』を出させて頂きました。書店には並ばない素人の編んだこの本を、真っ先に注文して下さった方が蓮見啓さんでした。南史子さん、生沢あゆむさんにもお届けするようにとの御指示がありましたことから、私はすぐに「海賊」の同人の方達であることを察知しました。それで本をお届けする際に、安房さんについての催しをお尋ねしたのが、「花豆の会」のそもそもの始まりです。
 「海賊」は二十五年ほども昔の学生時代に新宿紀伊國屋書店で見つけては買い求めていた同人誌です。かがまなければ取れない所に陳列してあったこの薄い本を、私は秘かに楽しみにしていました。山室静先生、立原えりかさん、安房さんを中心とした船員の方達のかもし出す雰囲気がとてもまぶしく、憧れさえ抱いていました。なかでも『風と木の歌』や『白いおうむの森』の著者安房さんには、とりことなっておりました。何が私をそこまで安房さんへと傾倒させていたのでしょうか。
 実は、私は安房さんの作品に出会う以前に、山室先生の『何のために』や『詩集時間の外で』に親しんでいました。既に二十歳を過ぎていたものの、その前途に何も見い出せず、毎日を欝々と暮らしていた私は、山室先生の虚無と諧?の世界に、静かに生きる形を探していたように思います。そして、安房さんの描かれる孤独と喪失の世界ど出会い、人生のエキスを味わうことで、大きな安堵と共に、ゆっくりと迷いの中に身を置くことができました。当時の安房さんが「自分のために」作品を書かれていなければ、私はあんなに夢中になることはなかっただろうと思います。
 勿論、私はおふたりの諦念にのみ惹かれていたわけではありません。おふたりの世界には必ず光が残されていました。私はその光が柔らかだったからこそ、安堵し、信頼し、出口のない模索の中で大人になる覚悟を育てることができたのでした。
 そして、おふたりから得た光を、私と妻なりに束ねたのが宇佐見先生の『明るさの神秘』です。宇佐見先生と山室先生、安房さんとを結ぶものは多分何もないと思います。けれども、私が宇佐見先生と初めて出会いました「タゴール展」は、山室先生の本からタゴールの生き方を学び、強く感銘を受けたために出かけることのできた展覧会でした。いくつもの奇縁がつながり、輪を感じます。

*宮沢賢治についての論考やエッセイを中心とした『明るさの神秘』は、現在みすず書房より再刷になっております。

会ができるまで  蓮見啓
 安房さんと味戸さんの二人展を、新設する遊葉館でやりませんか−岩手県水沢市に住む小平範男さんが、こんな手紙をくれたのは、もう二年近くまえのことです。
 遊葉(ゆうは)館とは、不思議な幸運によってできた、わたしの仕事場兼住宅です。それはまるで、C・ユングの言うシンクロニシテイ(偶然ではない偶然の一致)というものが、導いてくれたかのような・・。
 そして、仕事に忙しくしていた昨年末、安房さんの夫君である峰岸明さんから、久しぶりに電話をいただきました。その時わたしは思いたって、「いつか遊葉館で、『花豆展』をやりたいのですが」とお願いしました。
 峰岸さんは、即座に快諾して下さり、「何かと大変でしょう、その時には気持ばかり寄付をさせてもらいますよ」と言って下さいました。そして更にお話を続けていると、安房さんの会のイメージが見えてきました。コトコトとお豆は煮えて、もつと大きくふくらんで、まだまだ、今も静かに、安房さんの世界は煮え続けているのです・・。
 「花豆展」をエスカレートさせてこの際、「安房さんの会」を作ろうという提案に、小平さんはもとより、南史子さんも生沢あゆむさんも賛成してくれました。二人は、安房さんと共に同人誌「海賊」を始めて以来の友人です。まるで、不思議なシンクロニシテイによるカが、会の計画も世話人も、自然に決めてくれたかのように思えます。


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